庭先の睡蓮鉢で越年したメダカが17匹だったことは先日水を換えた時に知り、思ったより多かったのでちょっと嬉しかったが、一方で体格が貧弱に思えた。彼等にとって冬を生きることがもともと辛いことなのか、それともごく普通のことなのか、あるいはむしろ歓迎に値する楽しいことなのか、私はとんと無知である。こんなことを考えるのは、冬を重ねるたびますます辛さを厳しく感じられる自分の身を小さなメダカとひき比べたくなったからに相違なく、メダカにとっては迷惑な話であろう。
とは言え、先代のメダカより小ぶりになったメダカを眺めながら、餌を買うついでに、強壮剤のような何か刺激になるものを見つけてあげたい気になった。ドジョウには懲りたので、ほかに何かないかと物色するうち ・・・ あった、その名も床しい「楊貴妃」という赤メダカのペアである。緋メダカよりもぐっと赤く、金魚に近い感じだ。
で、それからどうなったか、って? ビニール袋の水温を睡蓮鉢のそれになじませてから、楊貴妃はめでたくお輿入れあそばしたのである。のであるが、その後のことは鉢の奥がよく見えなくて、ほとんど何も分からない。近々水を総換えしてきれいにしようと思っているうちに5日間が過ぎ ・・・ あの日がやって来た。
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連れ合いともども、両手で引っ掴んだ座布団を頭に当てて玄関を飛び出たら、近所の数人もいて、互いに怖いね怖いねと言い合った。頭上で電線が何本も大きく揺れ続け、足元で何かがピチャピチャいうなと思ったら睡蓮鉢の水が跳ねているのだった。が、メダカは鉢底に身を潜めたらしく姿を見せなかった。楊貴妃もさぞかし小さな肝を冷やしたことだろう。
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