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〜 前口上 〜
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〜 三浦哲郎著 「白夜を旅する人々」 〜
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ここしばらく、この長編小説の世界にどっぷり浸っている。500頁をこえる新潮文庫本の重みを布団の中で両手に感じるのも、おそらく明日の未明に終わるだろう。
では、何故、77歳のゆううつとこの大仏次郎賞受賞作とが結びつくのか? 手短に説明するならば、それは読書と寒気のせめぎあいなのだ。分厚い布団から外へ出ているのは頭部と両腕だが、真上ないし斜め上を向いて横たわっている関係上、両腕のパジャマの袖はかなりずり落ちる。これでは寒くて本が読めないので、昔流にいえば手甲のような、アームカバーなるものをはめている。長さ30センチあまり、薄手のニット製の筒状のもので、一方の端ちかくに一ヶ所切込みがあり、そこから親指を突き出すようになっている。そうすると10本の指だけが外気にさらされることになる。使うたび、私は100円ショップで買ったこのスグレモノのメーカーに心の中でお礼を言っている。
三浦哲郎は私が敬愛する作家の一人であり、私は 「忍ぶ川」 をはじめとして多くの短編やら 「ユタとふしぎな仲間たち」 に魅了されてきた読者の一人である。死去を報ずる 2010年8月の新聞記事や自選全集完結祝賀会の様子を伝えた 1990年5月の新聞記事も大切にしている。そぎ落とされた簡潔な表現・清冽な叙情・私小説の迫力・東北の匂いと味わい深い東北弁・・・。
いささか大袈裟に書いたかもしれないが、真夜中の寒気と小説の魅力とのせめぎあいも、もうすぐ終わろうとしている。
( 2012/12/05 )
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