第32話 : エッセイ
2009/9/27

高みめざして
   誰も、自分が描いた絵はそうそう何度も見はしない、と思う。ふつう、押入れか戸棚かウォークインクロゼットと称する所で眠っている。が、先日わけあって十数点の紙函と中味を照合したりしていたら、「横浜のスカイライン」なる水彩画が出てきた。今を去る18年前の9月に描いたもので、ちょっと気に入っているのは、建設途中の横浜ランドマークタワーが目玉になっている点だ。ビルの高さはすでに何十メートルにも達しているが、てっぺんには大きなクレーンが2基見え、さながら巨人が腕を振り回している様だ。このビルが日本一高いビルとして誇らしくオープンしたのは1993年7月16日と物の本にあるから、工事は更に2年近くを要したことになる。この絵はグループ展に出品したものの、評判にも何にもならず、記録的価値も認めて欲しい!と口の中でモグモグ言っている自分がいるばかりだった。記録ならデジカメで10秒で取れるよ、と言うのは誰だ!
 
 



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   さて、今年である。またもや9月である。テレビや新聞で東京スカイツリー建設の現況を見せられると、絵は無理としても写真は撮れる、いや撮らねば、と例の変テコな思いが頭をもたげてきた。地図で少し下調べをしてから、デジカメ2台をカバンに入れ、天気の良さそうな日に押上に向かった。5分ほど歩くと順光でシャッターを切れる場所にたどり着いた。そこはナントカ橋の袂で、すでに数人がカメラを構えていた。とにかく大きい。でかい。激撮する(この言い方、テレビの見過ぎ)。我知らずニンマリした、と思う。
   1958年末に出来上がった東京タワーは高さ333メートルだが、およそ半世紀を経て建てられる東京スカイツリーは高さなんと610メートル、2012年春完成予定らしい。610メートル! 聞くだに恐ろしい高さである。パソコンで調べたところ、例えば9月18日現在の高さは153メートルであった。
   閑話休題、紺碧の空に突き刺さる白い巨塔、雨を巻き込んで襲いかかる疾風に耐える塔など、塔のあれこれを想像しながら今の時点で写真を撮るということは、矢張り「思い出作り」ということになろうか。いずれ、歴史に学ぶ一つのよすがにはなろうが、今は、どんな音楽がこの光景に似合うだろうかと考えたり、現在の高さはドレミファ・・・で言えばどこらあたりに相当するのかな、と想像する方が愉しい。
 
( 2009/09/27 )
   
   

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