第63話 : エッセイ
2012/5/29

口ずさむ歌
 
 
♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪


お日様へっこんだで
もーうーちーへーけーろーかー
鍬と弁当箱
ひんまるめて担げば
仕事やめれば
ちょっくらばか寒いなー
煙草のみのみ
てっくりてっくりけーろー
 
時たまこう口ずさんでいる自分がいる。採譜する能力がないのでメロディーを伝えられないのが残念。また、印刷物で歌詞を見たことがないので、その確かさもあいまいだ。第一、題名をしらないし、前後の脈絡も不明である。
   そうであっても、この俗謡らしきものは母の立派な遺産である。母は91歳まで生き、若かりし頃の苦労が報われたかと周囲の者が感じられるような晩年を送ったが、初老の頃まではよくこの歌を小さく歌っていた。それから、上記とは全く別の歌で、こんなふうな鼻歌を口ずさむこともあった。
 
子取ろ子取ろの鬼がくりゃ
くるりと絵日傘すぼめましょ
お傘にかくれて
帰りましょ (戻りましょ、だったかも)
 
♯   ♯   ♯   ♯   ♯   ♯
 
はるかに高い次元での話になるが、チェコの有名な作曲家ドヴォルザークの作品に「わが母の教え給いし歌」があるのを私は知っている。宮本英世「クラシック珠玉の小品300」(講談社プラスアルファ文庫)によれば、かの「新世界」を作ったドヴォルザークは声楽の名曲も少なからずものしており、「わが母の・・・」は39歳の1880年、ボヘミアの詩人アドルフ・ヘイドゥークの詩にもとづいて作曲されたという。
   でも、次元の高さ低さに差はあれど、母が子に引継ぐ文化のはしくれとして、ことの本質に違いはない筈である。よって私は、以前どこかで書いたような「波浮の港」や「青葉の笛」といった母の愛唱歌のことと共に、このたびの俗謡のことも書き残すことにした。ついでながら、孫娘が今春パイプオルガンに挑戦を始めたとあって、ジイジは目を細めている。
( 2012/05/29 )
 
 
 

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