赤いカーネーションは朝8時に咲く。それを待っている人が国中にいて、この連続朝ドラの視聴率たるや、発表されるたびトップクラスである。昭和初期以来の時代の変遷をタテ糸とし、呉服屋に生まれた女主人公と彼女をとりまく人々の人生をヨコ糸に紡ぎ出した、血湧き肉躍るような TV ドラマである。(さ・え・ら は血と肉ではなく、あちこち の意のフランス語)。
これを見ないと一日が始まらない私が思うに、人気のひとつの秘密は饒舌な関西弁(大阪弁というべきか)であろう。昨年の3月11日このかた言葉を失い、あるいは言葉をむなしいと感じ、喪失感・寂寥感・孤独感に苛まれてきた被災者が、主人公のひたむきな生き方に寄り添い、めげない明るさと元気を感じ取っていると思いたい。それにしても、原作・脚本の舌を巻く巧みさ。登場人物達の個性的なこと。老境にありながらも主人公は新ブランド立ち上げに生き甲斐を見出す。閉じこもりがちだった孫娘はようやく進学を決心する。ドラマの大団円も近い。
ついでながら、このところ関西弁をはじめとする方言を売り物にしたような TV 番組がけっこう多い。また、旅番組で地方の人達の珍しい言葉やアクセントに接するのもほほえましく愉快である。それから、練習を重ねた末ではあろうが、役者やタレントがヘンな関西弁をたまに発音するのもご愛嬌である。関西生まれの私とて、いまだに、2音節の言葉でどう抑揚をつけるのかに迷うことがある。東京人にはなかなかなれない。あんた、どない思わはる?
( 2012/03/17 )
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