第42話 : 書評と詩
2010/10/28


電車に乗る詩集
  
  詩人の小池昌代編著になる 「通勤電車でよむ詩集」 (NHK 出版)は、内外古今の詩人のきらめくような作品を新書版に収めた手頃なアンソロジーである。各作品のあとに、編者による短いが詩人ならではの数行の所感が光る。そして、各作品がかもし出す詩情の重さや広がりが、カット絵を含むページの余白と絶妙なバランスを保っている。
 
  全41編の詩を通読した。一部は電車の中で。どれも、深い。重い。ずしん、と心を揺すぶられる。帯封に紹介されている識者の読後評に共感し、さすがと拍手する。旅が長くなるように祈れ、旅は急ぐなという言葉が強く響くカヴァフィスの 「イタカ」 (中井久夫訳) は、賢者の知恵にあふれていて心地好い。それは、リーダーシップというものが今どきそこかしこで欠如しているからだろうか。かと思うと、編者が <怖いよ、この詩> と書いた四元康祐の 「言語ジャック 1 新幹線・車内案内」 にはアッ!と叫んでしばらく言葉が出てこない。しいて言えば異形の詩か。
 
  ところで、「きっと泣いてしまうから、本書といっしょに必ずハンカチも鞄に忍ばせるように」 と角田光代が評したとあるので、筆者はニヤリとしてしまった。何故なら、文学的水準に差異はあろうが、筆者も末席に連なるある文集の読後感に、「電車の中では読めない」 との声が多い一件があるからだ。それは今春朝日新聞出版から発行された 「千の風になったあなたへ贈る手紙」 (朝日文庫)である。新井 満を選考委員長とし、5000 編ほどの応募作から選ばれたおよそ 150 編が収録されている。3月1日付けでこの本を紹介した天声人語子は、「空を渡る風の励ましが、胸に染みるような一冊である」 と締め括っている。筆者はペチャンコの財布をはたいてウン十人の友人知人に配ったが、これ以上は無理なので、みなさん是非600円ほどを都合して、お読みいただきたい。


付 録   
 
★☆ 八十路の戯れ歌 ☆★
 
八十路が来たら 歌おうぜ
「平均寿命は このあたり
昼寝ついでに 死んじまおう
これがおいらの 夢なのさ」
 
いやというほど 花を見て
いやというほど 汗かいた
鼻歌まじりの 日々があり
うめいて耐えた 夜もあった
 
永眠いうのが ほんとなら
昼寝ついでに いかせてよ
枕ひとつで 足りるから
ぜひぜひ お願い申します
 
 ( 2010/07/12 )
 
付録の付録として、下に、大きな船をスケッチした小さな絵があります。
 
 

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