第38話 : エッセイ
2010/3/15

身辺二題






気持はわかるけれど・・・
 
   ことしになって、大きなコンサートホールへ行った時の話である。3列に並ばされた長蛇の列がやっと動き始めた。途中、間口の広いクロークの前をゾロゾロと通るのだが、向かって左の方に張り出してある縦書きの掲示を見て私はアッと驚いた。
   それが 「花束受付」 を意味していることは明白なのだが、「受」 の字の 「又」 が代わりに 「寸」 となっている! よほど気がせいたのだろう。なんともユーモラスなこの字をデジカメで撮ればよかったのだが、良い席をねらっていた私はひとまずホールへ急いだあと、カメラ片手にくだんの場所へとって返した。が、やんぬるかな、クロークはあらかた受入れが済んだらしく、あの掲示は姿を消していた!
   急ぐあまりなのか、ラジオやテレビでアナウンサーが妙に途中をとばしてしゃべるのを聞くことがある。それに似ていなくもない。ただ、この間違いっぷりは字面がなんとも滑稽で、何故か笑えて仕方がない。あなたも一度、紙切れに縦にこの四文字を書いてみてほしい。
おまけは 「しとる」
 
   冷たい雨の一日、市主催の 「男の料理教室」 に参加した。頭にかぶる三角巾・エプロンなど各自持参の二十数人は、ネームカードを胸に神妙な面持ちで栄養講話を聞き、なれぬ手つきで調理実習をし、ありがたく試食したあとアンケートに記入したりして楽しい半日を終えた。私は以前ユネスコ主催での同様な教室に出たことがあり、一回はブルガリア料理、一回はインド料理であった。
   せりごはんを主食に、主菜は魚(タラ)と野菜の蒸し焼き、副菜がキャベツとあさりの酒蒸し、副々菜は春野菜のヨーグルトサラダ、そしてデザートがカフェモカ・ゼリーとなかなかリッチな献立である。ま、それぞれの食材にふさわしい調理法を学んだ、ということで、レシピももらったから、いつか又役に立つことと思う。
   そして、私にとってのおまけは、「しとる」 という言葉を覚えたことであった。デザートのゼリーを作るにあたり、「ゼラチンは水に振り入れ、15分位おいてしとらせる」 とレシピにはある。感じで意味はつかめるが、自分では使ったことのない 「しとる」 である。面白いことにこの言葉、何故か <岩国> にも広辞苑(第六版) にも見当たらず、一方、講談社学術文庫 「新版国語辞典」 には (湿る)、しめる、うるおうとの解がある。レシピにはほかにも、初めてではないが、「小房に分ける」 があったし、「くし型に切る」 とか 「半月切り」、「いちょう切り」 など、チャンバラさながらの言葉が出ていて面白い。
 
( 2010/03/15 )
   

戻る

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送