第18話 : エッセイ
2008/3/17

直純さんの名曲


「男はつらいよ」(星野哲郎作詞・山本直純作曲)を嫌いな人はいないと思うが、私は映画と共にこの曲が猛烈に好きである。というのも、途中一度も帰国することなく、アフリカのさる国で厳しい4年半を働いた後、ヨーロッパ経由で帰国するフライトの中で、この映画と「遭遇」、しびれてしまったのがきっかけだからである。私は、何年ぶりかの和風機内食に舌鼓を打ち、高度1万メートルの空中で、久しぶりの故国に思いを馳せてセンチになっていた。そして、寅さんに思いきり笑い、泣いた。これから帰って行く日本がひたすら懐かしく、大好きになった。


それから何年もしないうちに、わが一家はマンションを購入して引越した。この時の不動産会社は年に1回だったか2回だったか、主催するコンサートに客を招待してくれた。で、指揮棒を振り、司会をつとめていたのはなんと山本直純さん!ダジャレを連発しながら音楽の魅力を説いて飽きず、クラシック音楽の普及に身も心も捧げていらっしゃった。ある時は2階の客席から時々大声の応援が飛んで、それは来場した夫人の声だった。 −−そうして、何曲かのアンコール演奏があって、コンサートは「男はつらいよ」で終わるのが常であった。直純さんはいつも、愉しそうに1回ピョーンととび上がって終曲を閉じた。
日本人の心に沁みるこの名曲をものした天才直純さんは、2002年6月18日、惜しくも69歳で他界された。しかし、この曲との出会いはいつまでも私の心に刻まれている。名曲との出会いといえば、私には同じような状況で経験した「襟裳岬」(岡本おさみ作詞・吉田拓郎作曲)があるし、次女の卒園式で初めて聴いた「おもいでのアルバム」(増子とし作詞・本多鉄麿作曲)の感激やらがあるが、これらについては別の機会に譲る。
 
( 2008/03/17 )
 

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