第16話  写真とエッセイ
2007/12/7
パーゴラの下で

 小春日和の昼下がり、あらかた葉を落とした葡萄の木の下で足の爪をつんでいる。私の好きなひと時である。明るいグレイのペンキがはげかかったパーゴラが葡萄の枝を支えている。パーゴラは、10年前にここへ越して来た時、遠い昔アフリカの大きな街のレストランにあったのを突然なつかしく思い出して、急ごしらえで作ってもらったものである。一方、鉢植えの葡萄の木をその脇へ地植えにしたのは、それから1年以上経っていたように思う。これは、マンション住まいのころ、絵を描くために花屋で手に入れたもので、ひとまずお役目を終わるとベランダに放置されていたが、引っ越してからも同じ姿のまま庭の隅でヒョロヒョロしていたのだ。

パーゴラの下には丸いテーブルをはさんで椅子が2脚。3点とも、白く塗られた鋳物製である。葡萄模様が好きな我々夫婦は、やはり葡萄柄のすかしのあるテーブルと椅子を選んだのである。葡萄へのこだわりは何故か夫婦で一致していて、ついでに言えば我家では食器・クッション・置物等々で葡萄柄のものが多い。中でも、インド洋に浮かぶ仏領の島レユニオンで手に入れた、紫色の石で出来た一房の葡萄は思い出深い。出張仕事の合間の一日、島の南端にある小さな街の露店で出会った。マダガスカル製とのことだった。仕事の疲れや、真っ赤な溶岩流を見られなかった残念さが吹っ飛んだ気がした。
 − 時折そよ風が南から吹き、道端の枯葉がかさこそ音を立てて走る。さっき郵便ポストまで往復しただけで、今日はもう外出することもないか・・・もう少し足腰を鍛えるべきかな、などと考えているうちに陽が少し西へ移り、建物の影が私を覆い始めた。
 
☆註☆ パーゴラ(つる棚)はフランス語ではペルゴラ。
 
2007/11/29記

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